ペースが出来上がるまで

レースのペースは、レース前半と後半のタイム差によって確定します。そのため、ペースが確定するのはレース終了後ですが、後半のタイムは前半の通過タイムに多大な影響を受けるので、レース全体のペースは、前半のペースによってほぼ決定されると言えます。

前半の通過タイムを左右する原因となるのは、逃げ馬のタイプと、逃げ馬のハナ争いの有無、そして後続の逃げ馬へのプレッシャーです。逃げ馬と、それを追う先行勢が、レースのペースを決定する権利を有していると言えます。

 

ペースを判断する

ペースは、レースの前半と後半のタイム差によって確定します。そのため、スローペースかハイペースかという判断は、レースが終了した際の結果論でしか語れません

しかし、レース中にペースを推測することは可能です。そのレースの行われているクラスの平均走破時計から逆算すれば、現在のペースがスローであるかハイであるかというおおよその見当はつきます。

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ペースはレース後に確定

ペースは、レースの前半と後半のタイム差がどれほどあるかによって分類されます。レースが終了後、JRAによって発表されるラップタイムを、レースの前半と後半に分割して比較し、前半のタイムが速ければハイペース、後半のタイムが速ければスローペース、同じくらいならばミドルペースと判断されます。

レースが終了してみなければ、そのレースがスローペースだったかハイペースだったかというのはわかりません。たとえ道中のペースが速かったと感じても、後半もそれと同じペースで乗り切ってしまえば、そのレースはミドルペースに分類されてしまうからです。

  

レース中にペースを推測することは可能

レースが終了するまでは、そのレースのペースはわからないと書きましたが、よくレース中の実況でアナウンサーが、ペースについて言及することがあります。あれは、あくまで予測の範疇を出ていませんが、この予測が的外れであることはまずありません。なぜなら、レース中にペースを推測することが可能だからです。

競馬のレースは、細かくクラス分けされているので、同じクラスではレースのレベルが比較的同程度に落ち着きやすいです。レースのレベルが同じということは、馬場状態が同じであれば、走破時計もクラスの基準値から大きく逸れることはまずありません。

レースの走破時計をあらかじめ推測できていれば、前半の通過タイムが出た瞬間に後半の通過タイムが推測することが出来ます。そこで前半の通過タイムと後半の予測タイムの差を計算すれば、そのレースのペースの推測が可能となるのです。

  

騎手は、レースを進めながらペースを常に推測する

レースを外から観戦する競馬ファンは、前半の通過タイムからのペースの推測しか出来ませんが、実際に馬に騎乗している騎手は、実際に今自分が走っているスピード、馬の様子、体内時計など様々なファクターからペースを推測しながらレースをします。

そして、自らの馬にとって最もベストのポジションを模索しながらレースをします。ペースを推測する技術が高ければ高いほど、ベストのポジションをキープできる確率も高くなり、それは好成績へと繋がると言えます。

また、レースのペースを決定するのも、馬ではなく馬を操る騎手です。逃げ馬に騎乗している騎手は、自らの馬のタイプを把握した上で、ペースを自在に操り、それをマークする先行馬に騎乗している騎手は、そのペースが逃げ馬に有利だと思えばプレッシャーをかけにいきます。

 

ペースを動かす原因となるものは?

レースの後半のタイムは、前半の通過タイムに大きな影響を受けるので、レース全体のペースを決めるのは前半の通過タイムと言えます。前半のペースを決定するのは、馬群の先頭をいく馬、つまり逃げ馬です。

逃げ馬のペースを動かす原因となるものには、逃げ馬のタイプ逃げ馬によるハナ争い逃げ馬に後ろからプレッシャーをかける先行馬があります。いずれも、馬群の先頭集団で発生するもので、先行脚質の馬がレースのペースを決定する権利を持っていると言えます。

  

逃げ馬によるハナ争い

ペースを決定するのは逃げ馬です。逃げ馬によって打ちたい逃げの種類に差はありますが、逃げ馬というからにはハナを奪うことが重要です。一つのレースに逃げ馬が複数頭いた場合は、逃げ馬同士のハナ争いが発生します。

逃げ馬の数が多ければ多いほど、また、逃げ馬のタイプにマイペース逃げが多ければ多いほどハナ争いは熾烈になります。ハナ争いが長引くと、その分レースのペースが落ち着くのに時間がかかるため、ハイペースになりやすくなります。ハナ争いをする逃げ馬が他にいない場合は、1頭しかいない逃げ馬がペースを決めるので、極端なハイペースになることは少ないと言えます。

  

逃げ馬のタイプ

逃げ馬には大別して2つのタイプがあります。

  

マイペース逃げタイプ

マイペース逃げタイプは、後続との駆け引きを気にすることなく、とにかく自分のベストパフォーマンスを発揮する逃げを打つタイプです。スローペースで逃げることはまずなく、ミドルペース以上での逃げがほとんどです。自分でレースのペース確定させるタイプと言う事が出来ます。

マイペース逃げを打つ馬がいる場合は、その馬がレースのペースを完全にコントロールすることになり、後続はペースを動かす原因となることはまずありません。そのため、逃げ馬がいつもどの程度のペースで逃げているかを把握出来れば、レース前にペースを推測することがかなり楽になります。

  

溜め逃げタイプ

溜め逃げタイプは、マイペース逃げタイプとは違い、後続との駆け引きを常に意識する逃げを打つタイプです。自分のベストパフォーマンスを常に発揮しようとすると言うよりも、後続に対して位置取りの優位性を大きく保つために、出来るだけスローペースに落として逃げたい馬が多いと言えます。

溜め逃げタイプが自分の形に持ち込むためには、出来る限りスローペースにして、自らの余力を十分に残す必要があります。しかし、後続はそうなっては直線で追い込んでも差し切れない可能性が高くなるので、逃げ馬のペースを乱すために後ろからつつくという行動にでます。よって、後続にペースを確定されるタイプと言う事が出来ます。

  

逃げ馬を追走する組のプレッシャー

逃げ馬は、先頭を走っていることが重要です。先頭を走ることによって能力が初めて発揮されるといっても過言ではないので、先頭を他馬に奪われてしまっては元も子もありません。

溜め逃げタイプの逃げ馬は、出来るだけスローペースに落としながらレースを進めたいところですが、後続がそれに反発しプレッシャーをかけてくることがあります。すると、逃げ馬はハナを奪われるわけにはいかないので、仕方なくペースを上げざるを得なくなります。

マイペース逃げタイプの逃げ馬は、スローペースに落として逃げていることがまずないので、後続との距離がプレッシャーを簡単にかけられるほど近いことも少ないです。仮に後続との距離が近くても、既にミドルペース以上で逃げていることがほとんどなので、後続もそれ以上ペースを上げられては追走に手一杯になってしまうので、プレッシャーをかけにいくことはありません。

  

「ペースが出来上がるまで」まとめ

①ペースはレースの前半と後半のタイム差によって決定される
②レースの前半の通過タイムによって、ペースを推測することは可能
③レースの前半の通過タイムを左右するのは、逃げ馬とそれをマークする先行馬
④実際にレースのペースを動かしているのは騎手である
⑤逃げ馬の数多ければ多いほど、ハナ争いが熾烈なほど、ハイペースになりやすい
⑥マイペース逃げタイプの逃げ馬は、自分でペースを確定させる
⑦溜め逃げタイプの逃げ馬は、後続の先行馬にペースを確定させられる

レースのペースが決定されるのは、前半の時計と後半の時計が比較できるレース後です。しかし、レース後半の時計は、前半の時計に大きく影響を受けるので、実質レースのペースは前半の時点でほぼ決定されていると言えます。

レース前半の時計を左右するのは、馬群を引っ張る逃げ馬と、それをマークする先行馬です。逃げ馬のペースが速ければ、逃げ馬がそのままペースを確定させ、逃げ馬のペースが緩ければ、それをマークする先行馬がプレッシャーをかけてペースを上げさせます。そして、そのペース判断をして実際に馬を動かしているのは騎手であり、騎手の腕もペースに影響を与えます。

逃げ馬は1レースに複数頭いると、逃げ馬同士のハナ争いが発生します。頭数が多ければ多いほど、ハナ争いは熾烈を極め、長引きます。すると、レースのペースが落ち着くのに時間がかかるので、ハイペースになりがちです。

逃げ馬には2種類のタイプがあり、マイペース逃げタイプと溜め逃げタイプがあります。マイペース逃げタイプは、スローペースに落として逃げることは少ないので、自らペースを確定させると言え、溜め逃げタイプは、スローペースに落として逃げることが多いので、それをマークする後続勢のプレッシャーの度合いによって、ペースを確定させられると言えます。

ペースの出来上がり方について見てきました。次は、レース前半の展開の形成について見ていきます。

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