展開を左右する要素

展開を左右する要素は、レース中において様々な観点から考えられます。その中でも、推測出来る要素と出来ない要素に分類でき、推測出来る要素について細かく分析していくことが、より精度の高い展開予想に繋がると言えます。具体的にどのような展開を左右する要素があるかを探していきます。

推測可能な展開を左右する要素

展開を左右する要素には、推測出来るものと出来ないものがあります。推測出来ないものが、いわゆるマギレであり、マギレが発生してしまったら「これが競馬なんだ・・・」とでも自分を慰め、諦めるしかありません。その代わり、推測出来る要素に関しては、きっちりと展開予想の一部として取り込みましょう。以下、推測可能な展開を左右する要素について、重要な順に上から並べました。

 

脚質の分布

最も展開に影響を与えるのが、脚質の分布です。その中でも特に、逃げ・先行馬の数とタイプがレースを作るといっても過言ではないので、この2つには徹底的に注目しましょう。

レース展開は、出走している馬の脚質によって、基本形を形成します。脚質こそが、陣営の思惑が最も表れる部分と言えるでしょう。まずは、出走全馬の脚質をチェックし、それぞれがどのあたりから競馬をしたいかを把握することが展開予想の第一歩です。全体的な脚質まとめ、馬群の全体図をある程度想像出来たならば、次は枠順のチェックへと移ります。

 

枠順

競馬は、陸上競技などと違って、スタートは横一線です。つまり、単純計算では、外枠は内枠の馬よりも長い距離を走らなければならないため、距離のロスが発生します。しかし、条件次第では、外枠が有利に働き、逆に内枠が不利に働くこともあります。その条件とは、やはり脚質の分布とレース展開なのです。

脚質の分布と、枠順を照らし合わせ、先行組ではどの馬がスンナリ前へ行けそうかを把握します。そして、同時に前へなかなか行けなさそうなのはどの馬かということも。ここで、先ほど想像した馬群の全体図を、枠順を考慮に入れて再度馬群の全体図を思い描きます。そして次は、レースが行われるコース形態を考えます。

 

コース形態

競馬のレースは、行われる競馬場と距離により、コース形態が全く違います。それぞれのレース条件に特徴があり、それはそのままレース展開へと影響を与えます。

コース形態とレース展開の相関性を掴むには、まずはレースが行われる条件の特徴を掴む必要があります。スタートはどこからなのか、コーナーを何回曲がるのか、坂はあるのか、直線の長さはどれくらいなのか・・・と、チェック要因は数多くあります。そして、レースのコース形態を把握したならば、それが展開にどのような影響を与えそうか、また、そのコース形態を考えて騎手がどういうレースを頭の中で想定するかを考えます。

 

騎手の思惑

結局のところ、レースで馬を実際にコントロールしているのは騎手です。馬に実力が伴っていなければレースでは勝ちませんが、レースでどういう競馬をするかは、騎手の考えと手腕にかかって来ます。各馬の騎手が、どういったレースを思い描いているかを推測することなくては、展開予想は成り立ちません。

騎手は、レースでどのような競馬をするかを、二段階に分けて考えています。一つ目は、レース前に自らの乗る馬と他馬の関係を大まかに把握し、大体のレース構想を頭の中で画きます。そして二つ目は、実際にレースがスタートすると、頭の中の構想通りに全てが進むということはありえないので、その場その場で修正しながらレースをしていきます。

いざレースが始まってからの修正は、騎手にとっても予想とは違う展開の発生により修正を余儀なくされるので、予想する側からしても前もって想定の範囲内に組み込むことは難しいといえます。なので、騎手が元々頭に描いているレース運びを予想することに重点を置きます。言ってみれば、騎手が行う展開予想を予想するといったところでしょうか。

 

馬場状態

これは、芝のレースにおいて特に顕著なことですが、競馬の開催が進むにつれて、次第にレースを行うコースの中でも、馬場状態に変化が起きはじめます。この馬場状態の差異を、トラックバイアスと言います。馬場の良いところと悪いところを進むのでは、馬のパフォーマンス能力が明らかに変わってきます。

トラックバイアスが浮き彫りになってくると、どの馬も馬場状態のいいところを走りたいに決まっています。しかし、あまりに距離的なロスがあることを覚悟してまで、馬場のいいところを通る馬は少ないです。直線で、それまで誰も通ってない外ラチ沿いをわざわざ選んで走る馬はほとんどいないことからも分かります。現在走っている位置からの、距離的なロスを計算しても、それ以上に馬場の恩恵を受けられる場合はそこを選んで走ります。

逆に言えば、枠順や脚質の影響で、馬場のいいところを選んで走るにはロスが大きすぎる馬たちは、そのままのコースを走り続ける以外選択肢がありません。走るコースを意識的に変化させる要素という意味で、馬場状態は展開に影響を与えます。また、トラックバイアスの顕著なコースでのレースは、かなりの確率でコース取りの予想が現実となるので、展開予想もすんなり可能となります。

 

レース距離

馬がレースを勝つために必要な能力は、簡単に分けるとスピードスタミナです。そして、レース距離によってスピード能力とスタミナ能力の比重が異なります。

極端な話、短距離であればとにかくスピード重視で、スタミナはそこそこあればゴールまで一気に飛び込めます。一方の長距離では、いくらスピードがあっても、ゴールまで走りきるだけのスタミナがなければ意味がありません。また、スピードに関してはどのレースでも最大値を問われますが、スタミナに関しては、ある程度長い距離を走らないとどの程度の能力があるのかが見えてきません。

それは、関係者も競馬ファンも同じことで、距離が長いレースになると、スタミナ面に不安がある馬が多く出走してきます。彼らは、レースを乗り切るだけのスタミナを持ち合わせているかどうかが半信半疑である場合が多いので、出来ることならばスタミナを温存させながらレースをしたがります。その心理が、展開へと影響を与えるのです。

 

人気馬の位置取り

人気馬の位置取りという要素が展開に影響を与えるシーンは、実を言うとそれほど多くありません。これが重大な意味を持ってくるのは、GⅠ(JPNⅠ)などの重賞で、勝つことに意味があるレースです。

下級条件戦などでは、仮に負けてもすぐに次のレースがいくらでも控えていますが、GⅠともなると年に一回しかなく、そこで負けたら次という様に簡単に切り替えられるものではありません。そういうレースは、関係者も常に1着を意識した競馬となります。人気馬ともなるとその心理はさらに強くなります。

そして、レースで勝つためには、他の実力馬の位置取りを常に把握し、自分の馬との距離や能力を考えながらレースをします。いわゆる「マーク」という戦法です。その実力馬に勝つことが出来れば、このレースは勝てるというような、レースの核となる馬はマークが厳しくなります。その核となる馬が、どのような位置で、どういうレースをするかは、周りの馬全てに影響を与え、必然的に展開にも影響を与えることとなります。

「展開を左右する要素」まとめ

①展開予想は、推測可能な要素を集合させて行う
②最も影響を与えるものは、出走馬の脚質の分布である
③内枠と外枠では、スタート直後の行動が変化する
④レース条件ごとのコース形態の特徴により、展開への影響は変化する
⑤実際に馬を動かして展開を作るのは騎手の思惑である
⑥トラックバイアスによって、コース取りが変化する
⑦レース距離が長くなるほど、スタミナ温存策の心理が働きやすい
⑧重賞などの格の高いレースでは、人気馬の位置取りが展開へ影響を与える

推測可能な展開を左右する要素について並べてきました。ここでは、特に重要なものを並べたので、細かい要素はまだありますが、それについては別のところで説明することにします。

最も展開に影響を与えるのは、出走馬の脚質の分布です。どの馬がどのあたりの位置から競馬をしたいかというのは、そのまま展開の根本を形成します。

そして、最初にそれぞれに脚質にあわせたポジションをすんなりとれるかどうかを左右するのが枠順です。脚質によっては、枠順次第では予定のポジションをとるのに無駄な労力を消費する可能性があります。

また、競馬場のコース形態によっては、内と外での距離差が大きいところや、カーブの角度によってスピードを殺されやすいところもあり、馬群における位置によっては大きな影響を受けます。

馬を実際にコントロールして走らせているのは騎手なので、騎手の思惑と行動次第では、展開を大きく左右されます。騎手の脳内を推測することが出来れば、スムーズな展開予想が可能となります。

トラックバイアスの大きいところでは、なるべく馬場のいいところを走りたいという心理が影響するので、自然と馬の通るコースが限定されてきます。ここで、馬群の形はかなり限定されるといえます。

距離が長くなればなるほど、スタミナに不安のある馬は温存しながらレースを進めたがるので、その心理が仕掛けやペースに影響を与えます。

格の高いレースになると、1着になることに大きい意味が発生するので、そのレースの核となる実績馬にマークが集中します。その実績馬の動きが、レースの動きを大きく左右すると言えます。

次からは、各要素の中で最も影響の大きい、脚質の分布による展開への影響について書いていきます。

「展開は複数の複雑な要素によって左右される」の関連記事

「展開を左右する要素」の関連リンク


 

Copyrihgt 2005-2006 競馬研究所 All rights reserved.