人気馬の位置取りの影響

1番人気の馬は、レースの勝利に最も近い馬ということで、他馬からのマークが特別に厳しくなります。そのマークの質が、展開に影響を与える原因となります。

1番人気の馬が逃げるならば、その直後の馬、1番人気の馬が先行するならば、その前後の馬に展開をいじる権利が発生します。どの陣営も、1番人気の馬との共存か共倒れの2択を迫られることになり、その選択が展開とレース結果に多大な影響を与えます。

 

1番人気馬が展開に影響を与える理由

人気馬は、そのレースの中で相対的に実力を評価されている馬です。1番人気馬は、その中でももっとも勝つ確率が高いと考えられている馬です。そのため、他馬からのマークがきつくなり、展開に影響を与える要因となるのです。

  

人気馬=勝ちに1番近い馬

人気馬、中でも1番人気馬の存在が、展開に影響を与えるファクターとなります。1番人気馬というのは、競馬ファンがもっとも勝つ確率が高いと考えている馬です。実際、1番人気馬の勝率は3割以上をマークしており、実力最上位馬であることは間違いありません。

競馬は、とにかく全馬の中で最先着することが求められるます。なので、もっとも勝つ確率が高いであろう馬を負かすことが出来れば、それはレースでの勝ちに繋がると言えます。よって、1番人気馬は他馬からのマークが厳しくなり、その1番人気へのマークこそが、展開に影響を与える原因となるのです。

  

格の高いレースで特に顕著に現れる

競馬のレースは、1年間ほぼ休みなしで行われます。格の低いレースである未勝利戦や平場のレースは、年間を通して番組が尽きることはないのでいつでも出走可能ですが、重賞やGⅠのような格の高いレースとなると、1年に1度しか行われません。年齢制限のあるレースともなれば、一生に一度しか出走出来ない場合もあります。

年中行われている格の低いレースでは、仮に負けたとしてもすぐに次のリベンジの機会は訪れますが、格の高いレースとなれば、そのレースを制するためには翌年まで待たねばなりません。なので、一回ごとのレースに賭ける陣営の執念の度合いが比較にならないほど強いものがあります。

陣営の勝利への執念の度合いが高ければ高いほど、そのレースでの戦略もこと細かに導き出され、それは1番人気馬をいかに負かすかという思考に繋がります。レースの格が高くなればなるほど、1番人気馬へのマークが厳しくなり、その結果1番人気馬の存在による展開への影響も強くなるのです。

 

1番人気馬の脚質別の展開への影響

  

逃げの場合

1番人気の馬が逃げる場合、楽なペースで逃がしてしまったらそのまま逃げ切られてしまうので、後続はなるべくプレッシャーをかけながらレースを進めます。ただし、プレッシャーをかけられる方はもちろんですが、かける方にもそれ相応の負担がかかるので、出来ることならば他馬にその役割を押し付けたいところです。

     

2・3番手が人気薄の場合

逃げる1番人気の馬を追走する組が人気薄で、明らかに実力的に足りない馬だった場合、強い馬を楽に行かせることで、先行勢有利となる展開利を自らも受け、最初から2着を拾いに行くというレースを選択することがあります。こうなると、逃げた1番人気の馬は終始プレッシャーを受けずにレースを運べるので、そのまま逃げ切りが濃厚となります。

もしも、1番人気の馬を追走する組の馬と同じ陣営(馬主or厩舎)の有力馬が存在する場合は、あえて捨て駒として1番人気の馬に共倒れ覚悟でプレッシャーをかけ、後方にいる同じ陣営の馬への手助けをすることもあります

  

2・3番手が有力馬の場合

1番人気の馬を追走する組が、対抗と目される他の有力馬の場合、勝ちに行く競馬を選択せざるを得なくなるので、1番人気馬に自らプレッシャーをかけながら進むことが多くなります。その場合、1番人気馬もろとも余計な負担を被ることになるので、共倒れとなり、後方で脚を溜めていた人気薄の馬が台頭することがあります

  

先行の場合

1番人気の馬が先行の場合、展開に影響を与える権利を持つ馬は、逃げ馬と、1番人気の馬の直後で競馬をする馬です。

  

逃げ馬が人気薄の場合

逃げ馬が人気薄の場合は、逃げ馬が1番人気で後続が人気薄の時とほぼ同じような状況になります。自らも粘りこむことを考えるのならば、1番人気が楽を出来るような緩いペースに落としますが、同じ陣営の有力馬が後続にいるのならば、出来るだけ1番人気の馬に無駄な脚を使わせるような競馬をして、共倒れを狙います。

  

逃げ馬が有力馬の場合

逃げ馬が有力馬の場合は、自らが勝つことを考えるので、1番人気の馬と共倒れを選択することはまずありません。粘りこみを図るため、緩いペースに落とすレースに持ち込みたいところですが、そうなれば1番人気の馬が楽に逃げ馬を追走することができ、目標にされやすくなります。この展開になってしまうと、1番人気の馬が崩れる可能性は低くなります

  

差し馬が有力馬

差し馬が有力馬の場合は、1番人気の馬を常に射程圏内にいれたままレースを運びます。文字通り、この馬を交わせば勝てるというレースをします。そのため、1番人気の馬が力どおり直線抜け出せばハマりやすいこの戦法ですが、1番人気の馬が崩れる展開になると、それをマークしていた有力馬も仕掛けどころを見誤り、共倒れとなることも多々あります

  

差し・追いの場合

1番人気の馬でも、差し・追いの戦法を取る場合は、展開に与える影響はかなり小さくなります(参考記事:脚質の分布による展開への影響。他馬の目標となりにくい脚質なので、同脚質の差し・追い以外は自らのレースを心がけます。差し・追いの脚質を1番人気の馬が選択した時点で、影響を与える側ではなく、受ける側へと回ることになるのです。

「人気馬の位置取りが展開に与える影響」まとめ

①1番人気の馬は、マークされることによって展開に影響を与える
②レースの格が上がるほど、1番人気の馬が展開に与える影響は大きくなる
③1番人気が逃げで、2・3番手が人気薄の場合、1番人気の馬は楽をしやすい
④2・3番手が人気薄かつ後続に同陣営が出走している場合、共倒れ覚悟のレースをしやすい
⑤1番人気が先行で、逃げが人気薄の場合、1番人気の馬は楽をしやすい
⑥逃げが人気薄かつ後続に同陣営が出走している場合、共倒れ覚悟のレースをしやすい
⑦逃げが有力馬の場合、1番人気の格好の目標となりやすく、揃って崩れる可能性は低い
⑧差しが有力馬の場合、1番人気が崩れる展開になると、共倒れとなることも多々ある
⑨1番人気が差し・追いの場合、影響を与える側から受ける側へと移行するので影響は少ない

1番人気の馬は、レースでの勝利に最も近い存在です。そのため、1番人気の馬を負かせばレースでの勝利に近づくというロジックが発生し、必然的に他馬からのマークが厳しくなります。そのマークの質によって、展開に与える影響は変化してきます。

1番人気が逃げる場合は、それにプレッシャーをかけることの出来る先行馬に展開をいじる権利が与えられ、1番人気が先行する場合は、その前後で競馬をする逃げ馬と先行馬に権利が与えられます。しかし、1番人気が差すか追い込む場合は、その時点で展開に影響を与える脚質から影響を受ける脚質へと移行してしまうので、影響は限りなく小さくなります。

いじれる展開のシナリオはほぼ2通りに限定されており、1番人気の馬と共存するか、共倒れするかというものです。共存を狙う場合は、1番人気の馬とともに自らも楽な展開でレースを進め、共倒れを狙う場合は、自らが犠牲になっても1番人気に辛い展開でレースを進め、後続にいる同陣営の勝つ確率を上昇させるのが狙いです。

人気馬の位置取りの影響を見てきました。これで、基本的な展開に影響を与える要素はおさえたことになります。次からは、レース展開が形成される手順を細かく見ていくことにします。

「人気馬の位置取りが展開に与える影響」の関連記事

「人気馬の位置取りが展開に与える影響」の関連リンク


 

Copyrihgt 2005-2006 競馬研究所 All rights reserved.