レースの距離が展開に与える影響

レースの距離が短ければ短いほど、スピード能力に任せるレースが出来るので、前半飛ばして後半粘りこむという前傾のレースが目立ちますが、レースの距離が長くなれば長くなるほど、スタミナに対する意識が強くなり、出来るだけスタミナを温存しようという思考が騎手に働き、必然的に前半から道中にかけて緩み、後半の末脚勝負となる後傾のレースが発生しやすくなります。

 

距離の分類と、問われる能力

距離によって、馬がレース中に問われる能力が変化していきます。短ければ短いほど、絶対的なスピード能力を、距離が伸びていけばいくほど、それは次第にスタミナ能力へとシフトしていきます。問われる能力がスタミナ寄りになればなるほど、鞍上の思考に影響を与え、結果的に展開へ影響を与えやすくなります

レース距離の分類
距離 分類名 問われる能力 展開
1000 短距離 スピード









スタミナ
前傾









後傾
1200
1400
1600 マイル
1800 中距離
2000
2200
2400 クラシックディスタンス
3000 長距離
3200
3600

  • スピード能力:持って生まれた最大能力に限界があり、MAXスピード以上では走れない
  • スタミナ能力:ペースを緩ませれば、その分距離が伸びても対応可能

 

距離別の展開に与える影響

距離が短ければ短いほど、絶対的なスピード能力だけど押し切ることが可能となるので、スピードがある馬ならば、スタートからスピードに任せて飛ばすという戦法が最も効果があります。

もしも仮に最後脚が上がるようなことがあっても、それまでに持ち前のスピードでセーフティリードに持ち込めていれば、逃げ切ることが出来るからです。スピード自慢が集まる短距離戦では、得てして前半からハイペースで飛ばして、後半失速しながら粘るという前傾のレースが目立ちます。

逆に、問われる能力がスタミナへとシフトしていくと、未知の距離を走る馬が増えていきます。自らのスタミナ能力が未知数であるがゆえに、次第にスタミナを出来るだけ温存しながら恐る恐る走ろうとする馬が増えてきて、自然と前半をスローペースで乗り切って、後半に残っている力を爆発させるという後傾のレースが目立ちます。

  

短距離

距離を分類した時、最も短い距離区分となるのが1400m以下の短距離です。短距離は、スタミナがそれほどなくても、絶対的なスピードがあれば勝てる距離です。出走してくる馬もスピード自慢が多く、どの馬もスタートからスピードを争うレースをします。そのため、スタートから全速力で走るようなレースも少なくなく、結果的に前傾のレースが多くなります。

  

マイル

短距離の次にスピード能力が問われるのがマイル(1600m)の距離です。1400mからわずかに200m距離が伸びただけですが、スピードだけでは乗り切ることの出来ない距離に含まれます。

出走メンバーも、スピードの勝ったタイプだけではなく、中距離で好勝負できるスタミナを持ち合わせた馬も出てきます。短距離を専門とする馬は、スタミナを少しでも温存するために、短距離よりは緩いペースでレースをします。中距離で好勝負する馬は、短距離で活躍する馬に比べてスピード能力は若干低いので、短距離より緩いペースでも追走するのがギリギリであり、それ以上のペースアップを引き起こす原因とはなりません。

基本的にレースを作るのは短距離で活躍していた馬たちですが、スタミナの温存に重点を置くレースを彼らがするような場合には、後傾のレースになる場合もあります。

  

中距離

競馬において、もっともスタンダードと言えるのがこの中距離です。マイルで活躍する馬と、中長距離で活躍する馬の両方が入り乱れて競馬をするので、基本的にメンバー構成が色彩豊かになりがちです。

レースによって、メンバー構成がガラッと変わるのがこの中距離です。そのため、レース展開が最もメンバーに左右されるのもこの中距離と言えます。マイルで先行していた馬が多く出走しているならば、スピードが優先される前傾のレースになりやすく、逆に中長距離で活躍している馬が多く出走しているならば、終いの決め手が問われる後傾のレースになりやすいです。

  

クラシックディスタンス

クラシックディスタンスと呼ばれる2400mの距離は、日本でもっともGⅠが多く組まれている距離であることから、ある種根幹距離と考えられるかもしれません。また、古来よりこの距離で成績のいい馬こそが、強い馬という概念もあります。

2400mという距離は、中距離よりもやや問われる能力のスタミナ色が強くなるので、一介のマイラータイプではもう通用しません。中距離戦に対応出来るスピードを持つ馬と、長距離に対応出来るスタミナの持ち主がぶつかり合う距離と考えられます。

しかし、馬の絶対数は、現在の競馬界では長距離よりも中距離タイプの方が多く存在するので、必然的に出走馬は中距離タイプが比較的多くなります。そのため、出来るだけスタミナ勝負には持ち込まないために、中距離に対応出来るスピードを生かしてレースをつくり、スローペースに持ち込むレースが多くなります。

  

長距離

2400mまではいくつも番組が組まれているので、距離経験が容易く可能ですが、長距離ともなると、番組がかなり限られてくるので、自らのスタミナがゴールまでもつかどうか未知数の馬が多数出走するということになります。

そのため、どの馬もスタミナに絶対の自信があるとは言いがたく、出来るだけスタミナを温存させながらレースをしたいという思考が発生します。そのため、道中スローペースでやり過ごし、結局後傾のレースになることが多くなります。

「レースの距離が展開に与える影響」まとめ

①短距離ではスピード能力が、長距離ではスタミナ能力が問われる
②距離が伸びれば伸びるほど、騎手の思考に影響を与え、結果的に展開に影響を与える
③短距離では、スピードに任せて押し切る前傾のレースが目立つ
④マイルでは、短距離馬がスタミナ温存、中距離馬はスピード不足で、多少後傾気味になる
⑤中距離では、完全にメンバー構成によってペースが変化する
⑥クラシックディスタンスでは、中距離型の馬が多いので、スタミナ温存で後傾きになりやすい
⑦長距離では、距離経験のある馬が少ないので、どの馬もスタミナ温存で後傾になりやすい

距離が短いレースでは、スピード能力に任せて押し切る競馬を選択することが多いので、前傾のレースが目立ちます。距離が伸びるにつれて、スタミナ能力が次第に問われていくので、スタミナに自信がない馬が多く出走しているレースでは、スタミナ温存を鞍上が意識するので、次第に後傾のレースが多くなっていきます。

短距離では、出走全てがスピード能力に長けており、スタミナの絶対値が問われるレースとなることはまずないので、どの馬もスタートから飛ばしての粘りこみを図り、その結果前傾のレースが多くなります。

スピード能力だけでは乗り切れないマイルでは、スタミナ不足の短距離馬と、スピード不足の中距離馬が入り乱れているので、短距離馬はスタミナ温存、中距離馬はスピード不足ということで、それほど前傾になるレースは多くなりません。

色々なタイプの出走馬が入り乱れる中距離では、出走メンバーの傾向によってレース傾向も変化するので、一概には言及できません。

クラシックディスタンスでは、長距離型の馬よりも中距離型の馬の方が多く存在するので、出走メンバーが中距離よりになりやすいです。そのため、長距離馬よりもスピード能力に長けている中距離馬がレースのペースを握って、スタミナが問われにくい後傾のレースに持ち込むことが多くなります。

長距離のレースは、番組がそれほどないので、距離経験のない馬が多く出走します。そのため、全体的にスタミナに絶対的な自信がある陣営が少なく、出来る限りスタミナを温存しながらレースを進めたがります。そのため、後傾のレースになりやすい傾向があります。

レース距離が展開に与える影響について考えてきました。次は、人気馬の位置取りの影響について考えていきます。

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