枠順による展開への影響

競馬のスタートは、横一線で行われます。なので、カーブが存在するレースでは、外枠は距離的なロスを被ります。これは、直線競馬以外では決して覆らない大前提です。枠順は、大まかに分けて「内枠」「中枠」「外枠」の3つになります。内枠は先行脚質の馬に有利に働き、外枠は差し脚質の馬に有利に働きます。

また、枠順のによる影響は、スタート地点から最初のコーナーまでの距離に反比例します。短ければ短いほど、枠順の影響も大きくなります。基本的に先行脚質にとって不利な外枠ですが、芝スタートのダート戦だけは、外枠のほうが芝を走れる時間が長いのでスピードに乗りやすく、外枠有利になることがあります。

枠順の基本的な考え方

競馬は、陸上のトラックと違い、スタートは横一線で、その後コース取りが自由に行われます。カーブがあるコースなのに横一線ということは、内側に比べて外側からスタートする馬は、距離的なロスが発生します。外枠は距離的な不利があるというのは、直線競馬以外では大前提です。

 

外枠は距離的なロスが常にある

直線競馬以外では、必ずレース中一度はカーブを曲がります。カーブを曲がるということは、カーブの内側を回れば回るほど短い距離を走ることになり、逆に外側を回れば回るほど、長い距離を走ることになります。算数の円の問題ですね。

また、外枠の馬がスタートから最初のカーブまでになるべく内側へ入っておこうとすると、内枠の馬と比べて対角線に走っていかなければならないので、やはり内枠の馬よりも長い距離を走らなければなりません。カーブ時に外にいても、カーブまでに内にいても、どちらにしても外枠は距離的なロスは生じます。

また、出走頭数が多ければ多いほど、外枠はより多くの距離的なロスを被ることとなります。18頭立ての大外枠からスタートする馬は、最内枠からスタートする馬と比べて、距離の面では圧倒的に不利な状態から競馬を始めなければなりません。

最も距離的なロスを帳消しにするのは、スタート直後にすぐに内に入ることですが、他馬がいるので、わざとタイミングを遅らせてスタートしなければ不可能です。わざとタイミングを遅らせるということは、意図的な出遅れとなるので、必然的に自らが望むポジションの確保が出来なくなり、肉を切らせた上に骨まで断たれてしまいます。

この大前提が唯一覆るのが、直線での競馬です。直線競馬の場合は、真っ直ぐ走ればどの枠でも同じ距離を走ることになるので外枠による距離のロスはありません。直線競馬以外では、常に大外枠は距離面で不利を被っていることは頭に入れておきましょう。この大前提に例外はありません。

枠順は大まかに3分割

枠順は大まかに3つに分割できます。「内枠」「中枠」「外枠」。距離面以外で、各枠がどのように展開に影響を与えるかを見ていきます。

 

内枠

外枠に比べて距離面で優位にあるということは、同じ地点まで行くのにかかる時間は、同じスピードであると仮定するならば、外枠よりも内枠のほうが早く行けることになります。これは、先行脚質の馬にとっては外枠よりも内枠のほうがより早くポジションを確保できると言うことです。先行脚質の馬にとっては、内枠は有利な枠という事になります。

出走馬に逃げ馬が2頭いた場合は、テンの脚の速さに大きな違いがない限りは、内枠のほうがハナを切りやすいと言えます。外枠の馬は、内枠の馬を退けるほど強引な逃げを打つか、あるいはおとなしく控えて2番手におさまるしかありません。

先行脚質の馬に有利ということは、差し脚質の馬にとっては不利な枠ということです。差し脚質の馬は、道中先行馬の後方から競馬を進めますが、先行馬は基本的に内側をロスなく進もうとするので、内枠の差し馬がそのまま内側を走ると、最後まで進路が空かないままレースが終わってしまいます。

先行馬が内側を走る限り内は空かないので、仕方なく差し馬は外を回す必要があります。内枠から外にわざわざ持ち出して差すということは、かなりの距離のロスが発生します。よって、内枠の差し馬は不利ということが言えます。

 

外枠

内枠とは対照的に、先行脚質の馬にとってはポジション取りまでに時間がかかる外枠は不利になります。内枠に同型の先行脚質の馬がいた場合は、思い通りのポジションを取るのはかなり厳しくなります。

他に逃げ馬が存在しない場合は、外枠からでもすんなり逃げることは可能な場合もありますが、内枠に他の逃げ馬がいる場合は、出来るだけその馬に最短距離で迫って行きたいところです。

しかし、自分よりも内側に先行脚質の馬が大勢いると、内へなかなか切れ込むことが出来ず、仕方なく外目をダラダラと走らなければならなくこともよくあります。こういう展開になってしまい逃げ損なった馬は、まず馬券対象外となります。

先行脚質の馬に不利ということは、差し脚質の馬にとっては有利かというと、必ずしもそうとは言い切れません。

確かに、内枠と比べて勝負どころでわざわざ外を回すロスが省けるのはメリットですが、その外の位置をキープするには道中ずっと外々を回らなければならず、最後まで距離的なロスがついて回ってしまいます。

ただ、遠心力の関係で、円運動の径が大きくなるほどスピードを落とさずに回ってくることが出来ます。ラストスパートが武器の差し馬にとってはこれは大きなメリットとなります。距離的なロスを帳消しに出来ると言えるでしょう。先行脚質の馬にはないメリットがある分、デメリットもありますが、差し脚質は外枠を不利とは受け取らないと言えるでしょう。

 

中枠

内枠・外枠の両方の特徴をマイルドにしたと言えるのが中枠です。

逃げ馬からすれば、さらに内枠に同型がいると苦しいですが、それ以外の先行脚質の馬からすれば、内から出てくる馬と外から出てくる馬の両方を見ながらレースが出来るので、バランスがとれた最もいい枠と言えるでしょう。柔軟に対応できる脚質の馬にとっては、もってこいの中枠です。

差し脚質の馬にとっても、内枠から外に持ち出すよりは距離的なロスも少なく、かといって道中延々と外を回されることもない中枠は競馬しやすい枠と言えます。唯一の不安は、外枠の差し馬に勝負どころで外から被せられて、追い出しが遅れる可能性があることです。しかし、それは騎手の腕によっていくらでも回避可能なので、これといったデメリットのない中枠は歓迎と言えるでしょう。

 

枠順による影響はレース条件で左右される

枠順による影響は、レース条件によって左右され、影響の変化は2通りに分かれます。一つは、影響力が変化する場合で、もう一つは、影響の内容自体が変化する場合です。枠順の影響力は、スタート地点からコーナーまでの距離に反比例します。一方、影響の内容自体が変化するのは、スタート地点が特殊な場合に限ります。

 

スタート地点からコーナーまでの距離

スタート地点からコーナーまでの距離が短ければ短いほど、枠順の影響力は強くなり、スタート地点からコーナーまでの距離が長ければ長いほど、枠順の影響力は弱くなっていきます。

スタート地点からコーナーまでの距離が短い場合は、外枠の馬は内側にコースを取るよりも前にカーブに差し掛かってしまい、外々を回され、距離のロスがほぼ確実に発生します。外枠の逃げ馬は、カーブに差しかかる前に内枠の逃げ馬よりもハナ争いで優位に立ってないと、コーナリングの差で内枠の馬に出し抜かれてしまうので、かなりハナを制するのは厳しくなります。

逆に、スタート地点からコーナーまでの距離が長い場合は、外枠の馬はジワジワと内側に寄せていけるので、カーブが来る前にある程度の位置をキープできれば影響を最小限に食い止めることが出来ます。外枠の逃げ馬も同様に、カーブまでにハナを奪っていればいいので、テンの脚さえ速ければ、十分逃げることが可能となります。

長い条件 芝:新潟外回りコース、東京1600m、京都外回り1600m・1800m・2400m、阪神外回り1600m
短い条件 芝:札幌1500m、東京1800m・2000m、中山1600m
 

特殊条件

スタート地点にある特殊な条件がある場合にのみ、外枠不利の大前提が覆るときがあります。それは、ダート戦における、スタート地点が芝という条件です。

ダート戦といっても、スタート地点には芝を利用するレースも実はかなり組まれています。そして、ただスタート地点が芝なだけでは、外枠不利の大前提は覆りませんが、コースの設計上、外枠の方がわずかではありますが、長く芝の上を走ることが出来ます。これがミソです。

レース中のどこかで芝の上を走るのではなく、スタート後、どの馬もまだ加速がついていない状態の時に、芝の上を一瞬でも長く走っていられるというのは実は大きなアドバンテージになるのです。芝の上を長く走っていられる分、外枠の馬は加速がつきやすく、ポジション取りも楽に行えるのです。

逃げ馬に関しても、芝からのスタートで始まるレースは、大抵がコーナーまでの距離も比較的長めです。なので、外枠で一瞬でも芝を長く走っていられる馬のほうがスタート後のダッシュがつきやすく、ハナ争いでも優位に立つことが出来るのです。

「枠順による展開への影響」まとめ

①枠は、「内枠」「中枠」「外枠」に大まかに分けられる
②外枠は常に距離のロスがあるという大前提がある
③内枠は基本的に、先行馬にとって有利で、差し馬には不利である
④外枠は基本的に、差し馬に有利で、先行馬には不利である
⑤中枠は内と外の特徴をマイルドにしたもので、どの脚質でも柔軟に対応可能
⑥枠順の影響力は、スタート地点から最初のコーナーまでの距離に反比例する
⑦芝スタートのダート戦に限っては、外枠不利の大前提が覆される

競馬のスタートは、横一線で行われます。なので、カーブが存在するレースでは、外枠は距離的なロスを被ります。意図的にスタートのタイミングをずらすことで、距離的なロスを最小限に食い止めることは出来ますが、それによって自らの望むポジションの確保が極めて難しくなるので、非現実的と言えます。直線競馬以外では、常に外枠は距離的なロスがついて回ります。

枠順は、大まかに分けて「内枠」「中枠」「外枠」の3つになります。内枠は先行脚質の馬にとって有利ですが、外枠は不利になります。先行脚質の馬のポジション争いには、距離的なロスが大きなビハインドとなるからです。

一方で、差し脚質の馬が内枠に入ると、直線外へ持ち出すときのロスが大きくなるので不利になります。外枠へ入れば、外へわざわざ持ち出すロスがなくなるので、内枠よりはレースがしやすいと言えるでしょう。

内枠と外枠の両方の特徴をマイルドにしたのが中枠です。突出して有利な点も不利な点もないので、どの脚質にとっても無難にレースが出来るのが中枠と言えるでしょう。

枠順による影響は、レース条件によって左右され、影響の内容自体が変化する場合と、影響力が変化する場合の2つに分かれます。

影響の内容自体が変化するのは、スタート地点が芝から始まるダート戦という特殊な条件に限ります。この場合、外枠のほうが芝の部分を走る時間が長くなるので、スタートダッシュがつきやすく、外枠有利となる場合もあります。

また、枠順による影響は、スタート地点から最初のコーナーまでの距離に反比例します。短ければ短いほど影響力は大きく、長ければ長いほど影響力は小さくなります。

枠順による影響を見てきました。次は、各競馬場の特徴的なコース形態が、展開にどのような影響を与えるか見ていきましょう。

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